【第3回/遠藤エル】自分らしく生きるためのメソッド開発者が自身の半生で語る“自分を愛する”とは?



親として優秀である必要はない。ただ一緒にいること。


―親としてストレスフルな家庭に子どもを置かないために、一人一人が意識していけることって何でしょう。


一緒にいてあげること。まずはそこからじゃない?別に言葉もいらないし、何も教えることもない。ただ一緒にいて、1人じゃないっていう安心感。僕は多分それが欲しかったしね。


さっき、僕の中にいる父親がこびりついてるって話をして、それは自分の中での不快感として話をしたけど、同時に自分の体の一部になってるものがたくさんあるわけです。僕の体の中にいる父の全てが邪魔なわけじゃなく、勇気になっている部分もある。不安な自分が、心の中にいる父に「お前は大丈夫だ」って言われたくなることもあると思う。


だから、僕の例で言えば、その勇気の部分になれる要素っていうのを、親から子どもにいかに与えてあげられるかということが大事なのかなって思っていて、それはやっぱり安心感だと思うんですよ。


「何があってもお前の味方にいるぞ!」と僕が僕自身に声をかけているものを、息子にも声をかけているだけ。そうすると、それは、こびりつくものじゃなくて、自分の体の中 の筋力みたいなものになっていくんじゃないかって。


―受け継がれているものですね。いのちのようなものですね。


結局、人は、はじめはお腹の中でお母さんとつながっていて、そこから、この世界に放り出された時に切り離されちゃうわけじゃないですか。この世界に生まれた時に、まずは切り離されたっていうショックから始まるんですよね。それってものすごく大きいと思うんですよ。


そういうふうに生まれてきた僕らだからこそ、切り離されたその子を、もう一回「繋がってるんだよ」っていうことを伝えていくっていうのは、すごく大切なんじゃないかって。


大人になればいろんなこともありますし、子どもに愛情を持てない人だっているでしょうから・・・いかに人生が大変だとしても、つながりを伝えることを怠るのは、けしからんと思いますし、大事にしてほしいなと思います。


親として大人として優秀であることよりも、いつもそばにいてくれた存在であることが子どもにとって何よりも大きいんじゃないかって思います。


―親から受け継がれてきた、さっきおっしゃってた勇気みたいになっているものも確かにあるんだっていうことに気づくって大事ですね。 


 そうですね。大事だと思う。でもなかなか気づけないけどね。 


許せるんですよ。自分の気持ちに蓋をせずに晴らすと。


―結局ネガティブなものは見えやすいけれど、でも確かにあるものっていうところにフォーカスすると、自分にも、子どもにも伝えていきたいなと思えるのかもしれない。


僕も、そう思うんだけど。でも、どうなんだろう?「良かったところの方にフォーカスをしよう」ということの大切さを伝えることもあると思うんですよ。でも、そのフェーズに行くには、段階がある気がしていて。


それは、何かっていうと、《憎いと思ったものを、とことん憎んだことがあるのか?》ってことなんですよね。中途半端に考えて自分で「良くないな。」って抑え込んでいるから、いつまでも引きずるんだと思うんです。


言ってしまえば、憎んでるんだったら、心から憎んで、心から「その人がいなくなってほしい!」と思うぐらいまでとことん願って、自分の中の残虐性みたいなものを出し切るってことがすごく大事だと思うんですね。本人に何かぶつけるって意味じゃないよ。


出し切ったら何が起こるかっていうと、《自分の中でそこまで言うほどの憎い気持ちがあったんだ》ということを自覚するってことなんですよ。そして、これだけ酷いことまで思うと、「まあ、でもいいとこもあるよな。」とかになる。


若い頃、男同士で殴り合いの喧嘩をした後って、仲良くなるみたいなのと一緒でね。自分の拳で、相手の鼻血が出たり、顔が腫れるのを見た時に、「ここまで!やっちゃったけどお前も悪いところだけじゃねえからさ!」みたいな気持ちになるのよ。こっちも、やっちゃった手前・・・みたいなことで生まれてくるもんってあるんです。


要するに、許せるんですよ。自分の気持ちに蓋をせずに晴らすと。「相手にもいいところがある。」そういう風に自然に芽生えてくるものだと思うんです。


僕もそういう経験をしてきたので、父に対しても、手はだしてないけど言葉で彼を傷つけた。それをした時に本当に許せた。「もういいや。そこまで責めるのやめよう」って。「父は父なりに頑張って育ててくれてたんだ。かわいそうだ」と思い始めたんです。人間ってそういうもんですよね。喧嘩って大事だと思うんですよ。


―ため込んでる人が多いんじゃないかな。


自分の不満とか怒りをため込むから、あとあと大きなものになって大変になるんですよ。ちょこちょこちょこ出せるようになると、結構楽ですけどね。


頭で考え過ぎちゃうと、自分の感覚が鈍るんですよ。僕も仕事柄、説明をする必要があるから、自分を大事にするとはこうだよとかって伝えているけど・・・だけど、それって半分正解で、本当は頭で理解することじゃないんだけどねっていう気持ちも半分ある感じ。言葉にするとこういうことだよねっていうことを言ってる感じ。


―頭で理解しようとし過ぎると感覚が鈍る。


人って本当は瞬発的に嫌だと思ったら嫌!って体が反応してるはず。子どもの頃だと、腹立ったら、もう周りのこと気にしないで嫌な顔しちゃったりとか、泣いちゃいけない場所で泣いちゃったりとかするわけじゃないですか。それって、そのまま反応が早いんですよね。


そのぐらいの感覚をもともと持っていた人間たちが、どんどん理性でいろいろ感覚を抑圧して、考えるってことをやりすぎちゃってるんじゃないかな。だから、そういう意味では感覚をもう一回取り戻すことも、すごく大事なことなんじゃないかなと僕は思います。



ホテル家族とお化け屋敷。彼は、幼いころの家庭環境をそう表現した。


どちらも一見すると悪くないものでありながらも、寂しさや恐怖を含むもので、その彼の比喩表現の中に、何とも言えない環境の複雑さを垣間見たのだった。


それに加えて、会話の中で幾度となく繰り返された「必死」という言葉に、彼の生に向き合うリアリティが感じられたのではないだろうか。幼いころの環境は彼にとって苦しいものだったが、一方で、その体験こそが否が応でも彼に問いを投げ続け、感性を磨かせ、今の彼の創造性を育てたのだと言わざるを得ない。


現在彼が発案した自分らしく生きるためのメソッドは、その鋭い感性をいかんなく発揮して、感覚的で独特の世界観を放っている。そのメッセージは、すべて彼の体験の蓄積であり、「人に振り向いてほしい」という彼の純粋な欲求から、どうしたら人に伝わるのかを試行錯誤し形づくってきた、自分へのメッセージそのものだ。


今回のインタビューで、彼自身が家族との関係性の中から「自分ではないもの」を直視し、「本当の自分」というものに正直に真正面から向き合ってきた背景が浮かび上がった。必死に自分を守るために、自分の味方につくことを諦めずに続けてきた彼だからこそ、自分の弱さを受け入れ他者と手をつなごうとする世界観が成立していることを感じられた。


彼が伝えるメッセージには、そんな遠藤エルという存在ならではの世界観が充満した場で、多くの人の心を解き放っている。わたしは、一ファンとして彼の繊細かつ、大きく強い「いのち」の向かう先にわくわくしている。彼の生きる姿に敬意を表し、これからも応援していきたいと思う。  


PROFILE 

遠藤エル(EL Endo) 

クリエイティブディレクター

「破壊と目覚め」をテーマに、その人の潜在的魅力を発揮させるクリエイティブとセッションを提供中。

 

2000年。音楽誌「BANDやろうぜ」男性美容誌「smart HEAD」などの企画・編集記者として一流ミュージシャンや当時カリスマ美容師と呼ばれたスタイリストを多数取材。自身が作詞/作曲/ヴォーカルを担当したロックバンドでは、年間100本以上の全国ツアー、3枚のアルバムをリリース。


2012年。ミュージシャン活動停止を機に、畑違いのWEBコンテンツ事業(占い・スピリチュアル部門)へ拠点を移す。プロデューサーとしてゼロから指揮したコンテンツは3年で利用者数3万人、年商7億円の実績を持つ。


2015年。頚椎椎間板ヘルニアを患い、右下半身が麻痺。手術で8割は回復をするも、歩行が不自由な生活に。この経験が「明日からの自分はどう生きるのか」を強制的に考えるきっかけとなった。


2018年〜現在。各種事業のコンサルティングや、様々なプロジェクトのプロデュースを始める。 

2022年。これまでの様々な出会いから、存在感を放つ人たちには、心を惹きつけ、人に強烈な影響を与える「何か」があることに気付く。その「何か」を発揮させるメカニズムを体系化。現在コンサルティングや講座を通して提供を行っている。


取材・ライター



はぎのあきこ(Akiko Hagino)

フリーライター/ウェルビーイング思想家


自分とまわりの環境とのつながりの中で、安寧を感じ幸福な状態を指すspiritual well-being思想を基軸として、「わたしたちはどう生きたいのか、どう死にたいのか」という正解のない問いを探究するため、独自のスタイルで取材・執筆をしながら、タッチケアやエネルギーワーク、ヒーリングを行うセラピストとして活動中。 


看護師、看護大学教員として人の死に触れ、「いのち」に直面してきた経験や最愛の祖母の死からの学びから自分の生き方、在り方を見つめ直すことが今の活動を始めるきっかけとなっている。


取材や発信のテーマは、十人十色の「自分」という存在の美しさ、「いのち」がある今の喜びを伝えている。


《講義》 

2021年〜生命倫理・看護学原論の一部講義担当
2024年〜人間関係論担当


セルフマネジメント

メンタルヘルス
ウェルビーイング
他者とかかわり生きる
自他理解とは
倫理と道徳
生命倫理
環境と相互作用
関係性の発達理論
「触れる」を感じ観る
「聞く」をはじめる
生きるとはたらく

キャリアマネジメント  など


《主な実施機関》

京都光華女子大学/西神看護専門学校 など


《主な研究実績》

2005年 臨地実習フィールドと大学の連携システムの構築(共同研究)/ 訪問看護ステーションにおける災害対策マニュアル作成の取り組み(共同研究)/ 地域で生活する障害児・者の自律を支援する看護プログラムの開発(共同研究)

2017年 「死に場所難民」到来に備えて在宅医療・在宅看取りの問題点を探る(共同研究)

2024年 コロナ禍における訪問看護師のmental/spiritual well-being(修士論文)



TEOLつながり

TEOLつながりは 「わたしたちはどう生きたいのか、 どう死にたいのか」 十人十色の「自分」という存在の美しさ 「いのち」がある今の喜びを 探求し表現するための情報を お届けするメディアです。 自分とまわりの環境とのつながりの中で 安寧を感じ幸福な状態を指す スピリチュアル・ウェルビーイング思想を 基軸として、答えのない問いから 一人ひとり違う生き方を見つめるヒントを お届けします。