Akiko

フリーライター/ウェルビーイング思想家

肉体的、精神的、社会的すべてにおいて満たされた幸福な状態を指す、ウェルビーイング思想を基軸に、「わたしたちはどう生きたいのか、どう死にたいのか」という正解のない問いを探究するため、独自のスタイルで取材・執筆をしながら、タッチケアやエネルギーワーク、ヒーリングを行うセラピストとして活動中。

看護師、大学教員として人の死に触れ、「いのち」に直面してきた経験や最愛の祖父母の死からの学びから、自分の生き方、在り方を見つめ直すことが今の活動を始めるきっかけとなっている。

記事一覧(81)

【劒持秀樹】VOL.① 元劇団四季、現スピリチュアリスト主夫が語る人間の純粋性。「後悔しない生き方」とは?

彼は、パートナーである奈央さんを通じて、私が眼鏡屋だった頃に、お客さんとしてセッションを受けてくれた。そのセッションでの彼の印象は、「ストレートで、自分から目を逸らさない人だな」だった。私の奥まで射抜くような真っ直ぐさが印象的だった。テーマパークダンサー、劇団四季の劇団員という芸能の世界を経て、ビジネスコンサルとしても活躍してきた彼だったが、第二子であるトントンが産まれたことをきっかけに「子どもの成長を一瞬でも見逃したくない」と仕事をやめた。そんな自由な生き方を望みながらも、実際に多くの人がなかなかできない決断であるが故に、その生き方に興味関心をもつ人は少なくない。

結果的に主夫となり、「お金を稼がなければ・・・」という呪縛からも自由になった彼。ただただ豊かさを受け取る生き方や自分に嘘をつかずに生きる姿を見せてもらった。彼の場合、それが本当に純粋に貫かれているのだ。彼の、その純粋性を貫く強さは子どものようでもあり、人間の本来の姿に思えてならない。

そんな彼は、息子トントンに起こった出来事(※1)をどのように受け取っていたのだろうか。そして、彼が《彼そのものを生きている》と感じさせる、その生き方の原点とは??今回は、パートナーである劔持奈央さんのインタビューに続き、彼の真ん中に触れさせていただいた。 (取材:はぎのあきこ)  (※1) ⋯彼の息子トントンが道端で出会ったアルコール依存症の「おっちゃん」について行き、お酒を飲んで豹変したおっちゃんから暴力を受けて保護された事件。    → 劔持奈央さんのインタビュー記事を参照

【はぎのあきこ】「自分を真剣に生きる大人たち」にフォーカスしたインタビューサイト運営者が語る。自他を尊重する生き方とは?

私自身の人生を変えた“対話の価値”を多くの人にシェアしたいー取材やライターの仕事経験がない、あきこさんがインタビューをはじめた「きっかけ」を教えてください。もともとわたしは、思い込みが強く、ネガティブで自己否定がとまらない性格でした。でも、幸いご縁に恵まれてたくさんの人たちとの何気ない対話の中でハッと気付かされることが多く、そのおかげで自分を真っ直ぐに観れるようになった経験をしてきたんです。 ーあきこさん自身が変わるきっかけは「対話」にあったんですね。そうですね。たくさんの気づきを与えてくれた人たちは「自分を真剣に生きている」という共通点があります。そういう人との対話を通して、他者とのちがいを知ることができました。人間の不思議と言うか、「生きるって何だろう」「人ってなんでこんなに違うんだろう」と思い始めたんです。そんな視点を得たことで、どこまでも自由になれるし、自分で人生を創っていけると思えたんです。こんなふうに私が経験してきた対話の価値を、わたしの中だけでなく、多くの人にシェアするにはどうしたらいいかな、と考えました。それをある方に相談したら「自分でサイトをつくってインタビューをして記事にしてみたら?」と提案をいただき、なるほど!と。インタビューなら、対話的に語ることもできるし、人間同士のやりとりの中で生まれる言葉が届けられる。そう感じて、経験もないわたしでしたが、思いきって始めました。 いつか訪れる死を忘れず、“生きている今”に立ち、自分で決めて動こうーあきこさんが運営するインタビューサイト「TEOLつながり」では、生きること・死ぬことを真剣に問い、今を「一所懸命」に生きる人へフォーカスを当てる、とありました。こうした人たちを取材の対象にしているのは、どういった意図があるのですか?コロナ禍で最愛の祖母の死に立ち会えなかった体験をしたのが大きいかもしれません。当初は「祖母に会えずに亡くなった」のは、病院の面会制限のせいと嘆いていましたが、本当はどうにかすれば、会いに行けたかもしれないのに、会いに行かなかった。つまり、会えなかったのは「自分の判断だった」と感じるようになりました。

その気づきから、あぶり出されるわたし自身の弱さや欲深さ、狡さ。同時に「寂しかった」「悲しかった」という気持ちを抱えている自分に気づいたんです。 ー自分の本音の気持ちや感覚に気づけた、と。はい、そこからですね。最愛の祖母からつながれた「いのち」の重みやあたたかさをリアルに体感したのは。その感覚は深い安心とともに、私たちは物体を超えて、いのちでつながり生きている。そんな自分をもっと大切にしよう、生きているこの時を真剣に生きようという想いが溢れてたんです。ー最愛の祖母の死が教えてくれたという感覚でしょうか。まさにその通りです。だから、「TEOLつながり」のテーマにしている「真剣に生きる」って、今目の前に起こっている事実をただ観て、いつか訪れる死を忘れず、生きている今に立って、自分で決めて動こうというメッセージを込めています。ーいつか必ず訪れる死と生きている今。だからこそ自分で決めて動く。 そうです。でも、それは決して気張って信念を貫くということでもなくて。自分の弱いところも素晴らしいところも含めて、色々な自分、どんな自分も見放さず、正直になり、つながって生きて行こうとする力だと思うんですよ。ーたしかに、生きていく力は誰にとっても大切なことのように思えます。わたしは教育現場でも活動をしているんですが、そこで出会う若者たちの中には「社会の中で生き抜くためには、自分を削ってでも働かなきゃいけない」というイメージをもつ子も少なくありません。 それに若者から「大人って大変だよね」「なんか愚痴ばっかりでつまらないよね」と言われるのはダサいし、そんなことをつなげていきたくはありません。大人の私たちが情熱をもって真剣に生きている姿は希望になるはずです。ー大人の私たちが情熱をもって真剣に自分を生きる姿は、若者の希望にもつながる。はい。自分の「いのち」を尊重し敬意をもちながら、他者とのかかわりをもって真剣に情熱的に生きること、いつからでも誰でも可能性は拓けているのだということを感じられる社会でありたい、それを次世代に残したいと感じるようになりました。そこで、まずわたし自身が真剣になり、さらに「真剣に生きる人たち」にお話をきいていくことで、そんな人間の生き様を表現していこうと。それができる場所が私にとって「TEOLつながり」というサイトです。色々な人の「はたらく」価値観に触れて、「自分の仕事」を考えるきっかけとなればいい ーインタビューのもうひとつのテーマとして「働く」と「生きがい」に焦点をあて、個人でビジネスをしている人たちの人間性や考え方を引き出した記事も掲載していますね。そこから読者に伝えたいと思っていることはどんなことですか?わたしは、「生きること」と「はたらくこと」を分けて考えておらず、延長線上にあると考えています。そうでありながらも、人間は「はたらくこと」に多くの時間をかけています。

そこで、わたし自身が「はたらく」とは?「仕事」とは何だろう?と問いをもってきました。わたし自身の現時点でのこたえはありますが、他者のこたえもききたいと思った経緯があります。ーなるほど。生きることと働くこと。仕事とは何か?という問いからはじまった、と。はい。それに人それぞれの、その人にしかできない仕事があるとも感じています。それがインタビューによって浮かび上がることで、その人の魅力が伝わればいいなと思いますし、若い世代の、これからはたらきはじめる方々が色々な「はたらく」という価値観に触れて、自分の仕事を考えるきっかけとなればいいなと思っています。 ー人それぞれ、色々な人の価値観に触れる。そういえば、以前あきこさんは、インタビューを依頼する人は、有名無名にこだわらず、さまざまな人にスポットを当てたいとおっしゃっていましたね。はい。もちろん著名な方は、それだけ人に注目される独特な世界観があって「おもしろい」と思います。でも、わたしは「人間そのもの」に興味があるので。あくまでも、わたしの関心は「人ってなんでこんなに違うんだろう?」なんです。どんな人でも、その「ちがい」を教えてくれますので、有名かどうかはあまり関係がないのですよね。 ーたしかに人間としてのちがいにフォーカスするなら、有名無名は関係ありませんね。生き方や考え方は十人十色ですし。むしろ、まだ光が当たっていない(本人もあまり語ってこなかった)からこそ、言葉にならない「何か」だったり、本音が時間をかけて言葉になっていく過程だったり、じっくり練り上げて自分の根源から発する想いといった原石があると思っています。ご縁でつながった私にとって大切な方たちの人間としての魅力をもっと伝えていきたいですね。 その人の存在そのものの美しさが伝わる「いのちの言葉」をきくーあきこさんがインタビューをするときに、心がけていることはありますか?話を《きく》ということを意識しています。《きく》とは、相手とのやりとりで結果的にどんなことが起こるかをコントロールしようとしないことから始まるもの。つまり、「自分の聞きたいことを思い通りに聞き出していくものではない」ということなんです。ー《きく》とは相手をコントロールしないこと、なんですね。はい。それって当たり前では?と思われがちですが、実際は、みんなあまり人の話を聞いているようで聞いてないのではないかと思うんです。

わたしはこれまで本当にきいてもらったと感じる体験がいくつかあります。それは、わたしの奥底から満たされた体験で、わたしを丸ごと大切にされたと感じるものでした。いのちに触れてもらったのだと思っています。ーいのちに触れた感覚ですか。そうです。相手のいのちに触れるには、いのちに対する敬意が大切です。だから、わたしがインタビューをする際にも、目の前のいのちに対して、何とかしてやろうとか、引き出してやろうとか、思うはずがないんです。大切にされていると思えないのに、話すなんて無理でしょう。 ーたしかにそれをされてしまうと心が開けませんよね。だから、インタビューでは、相手の微細な意識の動きを感じながら、その人の表面だけではない、いのちそのものに触れている。その人の「いのちの言葉」をきいている感覚を大切にしています。ーいのちの言葉、ですか。「いのちの言葉」は、肩書きや名声、実績というような表層を貫いて、その人の存在そのものの魅力や美しさを多くの人に感じてもらえるメッセージになるんです。

それに、自分の真っ直ぐな言葉を出すって、話し手にとってもすごく心地よいもの。新しい自分を発見したり、再確認したりできる。言語にならないものを、言語にしていく、表現していくことで、自分とつながり合うことができる機会になるはずです。それは、つまり、自分の「いのち」そのものなんです。上手く言えたとか、たくさん話せたとかではないんですよね。これがわたしのインタビューの大事な根幹であり、受けてくださる方に「インタビューを受けて良かった」と言っていただけている理由だと思っています。ーこれから先、あきこさんがインタビューを通して届けたいこと、伝えたいことがあれば、教えて下さい。他者の観る世界を自分の観ている世界にあてはめるのではなく、ちがいを「ちがい」としてそのまま観ることが前提となる、そんなきっかけになれるようなサイトを丁寧に創り、育てていきたいと思っています。  TEOLつながりの掲載するインタビューを読んでくださる人々が、自分という存在を知り、「尊厳をもって真剣に生きる」ことや「他者とかかわり生きていく」ということについて、改めて考えたり、見つめるきっかけとなってくれたら嬉しいです。